それでは始めよう
2015年04月08日
【まずイメージを膨らませて】
あなたの作詞への「明確な目的」は、強い想いで満ち溢れていることでしょう。それは恋愛であったり、自然の美しさであったり、それぞれだと思います。
それでは、まずイメージを膨らませて、大まかな物語を描いてください。完璧でなくとも良いのです。難しく考えないで、幼い子供が物語を口ずさむような幼稚なものでもかまいません。今のそのイメージを忘れずに、これから先に進んでください。
【情報を集めよう】
作詞するためには、いくらあなたに強い意志があっても、簡単には進みません。その作詞に必要な情報をまず集めることが重要です。私原科香月が、作詞した中から例をあげてみましょう。
「ひとり雨晴海岸」の時には、この雨晴海岸へのアクセス、また雨晴海岸の美しい時期や名所、また松の木や砂のことまで調べました。
「高山本線~渚駅~」の場合は、飛騨川の上を走る高山本線の電車の姿や渚駅の駅舎・電車の時刻表まで調べました。それから飛騨川の流れ方や、この地方の冬の花なども調べました。
また歌詞には、よく花や月・雲などが出てきますが、これらすべてには季語があります。歌詞と俳句では違うかもしれませんが、間違って使ってはなりません。
例えば、綿雲は夏の季語ですから、春の雰囲気の歌詞に使うことはできませんし、千日草は秋の花ですから、やはり春の歌詞に使うことはできません。
作詞においては、季語のみでなくことばの使い方や熟語の意味など、すべてに整合性を確認しながら進めることも大切なことです。
季語やことばの使い方など、少しでも不安があったら直ぐ調べる癖をつけておきましょう。時間が経つと他のことに集中して忘れてしまうことがあるからです。
傍に、国語辞典を一冊置いておくことをお勧めします。辞典で調べられないことは、ネット検索で調べたら良いでしょう。
とにかく、今あなたが歌詞作りに必要と思われる情報を少しでも多く集めることが、今後の歌詞作りに大きな意味があります。
【次に言葉集めをしっかりと】
ここからが、作詞の始まりと言えると思います。
まず写真や情報をもとにイメージを膨らませ、歌詞として使いたいことばや文章を書いてみてください。思いつくまま、重複してもよいですから、思いつくものをすべて文字にしてください。歌詞に用いるかどうかの判断は後にして、とにかくたくさんのことばや文章を書き進めましょう。
=ひとり雨晴海岸のことば集め=
私の「ひとり雨晴海岸」の時の、ことば集めを載せてみます。この時点では漠然とした感じですが、雨晴海岸を舞台に、若い女性の哀しい恋心をイメージにことばを集めました。
具体的には、若い女性が将来を誓い合いながらも、分かれた男性の故郷を訪れるというシチュエーションにしました。参考にしてください。
ひとり来ました 何度も夢でみた浜辺
海にそびえる立山は 朝日に映えて
吐く息凍る白砂に 涙を落とす
あなたのふるさとにひとり
なぜわたしを置いて故郷に
氷見本線のあなた話した
今も憂いて泣いています
あなたどこなの あなたの名前叫んでも
波間に消えて 届かない
氷見線でひとり来ました この海岸に
あなたのいない あなたの故郷
吐息を凍らせながら 二人で歩く姿が夢でした
ここできっと逢えると 信じて来たの
溢れる涙白浜に
以上のことば集めは、スペース上割愛しましたが、これで3割くらいです。繰り返しますが、このことば集めは無駄と思っても、同じようなことばでも多い方が良いので、とにかく沢山集めてください。
=あなたの想いのみの作詞でも=
写真や情報を必要としない作詞の場合もあることと思います。恋や夫婦の絆などの作詞の場合です。ですが聴く方にとっては、より具体的な固有名詞が入っていた方がイメージしやすいと思われます。ですので、恋の作詞なら二人で行った場所や揃いで買った物などの名称を入れたら良いのではと思います。夫婦の絆であれば、孫の名前や二人で育てた植物の名前などが良いでしょう。
【ことばを並べてみよう】
それでは、この集まったことばを元に、イメージを維持しつつ、このことばは歌詞1番の何行目、このことばは歌詞2番目の何行目というふうに、おおまかに思い付くまま入れてみましょう。もちろん3番目までです。
ことば集めが少なくて、ここに何かことばが欲しいということが結構あるかも知れません。でも、慌てなくても大丈夫です。そのまま空欄にしておき、先に進めましょう。私の「ひとり雨晴海岸」の作詞の過程で何度もありました。きっと、見つかります。
【ことばに文字数を入れてみよう】
歌詞にはあるルールがあり、その上で曲が成り立っています。もちろんことばや情景で、聴く方のこころを魅了することは大切なことですが、それ以前に重要な決まりごとがあるのです。
それは文字数です。3番までの歌詞なら、1番から3番までの1行目の文字数が同じでなければなりません。各行の文字数が同じでも、行の中の区切りの文字数もまた同じでなければなりません。そうでないと、作曲の先生が困ります。
=「高山本線~渚駅~」の文字入れ=
「高山本線~渚駅~」の1番から3番までの1行目の歌詞の文字数をご覧ください。
1番 よふけに(4)ついた(3)ふるさとえきは(7) 合計14文字
2番 ひだがわ(4)はしる(3)たにまのさとで(7) 合計14文字
3番 やさしい(4)ははに(3)あいたいけれど(7) 合計14文字
歌詞1番の1行目が(4)(3)(7)の14文字なら、2番3番の歌詞1行目も同じ文字数でなければなりません。ことばや情景は、その条件の中で作らなければなりません。
それでは次に進みます。既に1番から3番まで、それなりのことばがはいったと思います。上に記しました「高山本線~渚駅~」の例を参考に、1番から3番までの各行の区切りのことばと行全体の文字数を入れてみましょう。
各行の区切りの文字数、また行全体の文字数はどうですか?合っていますか?
文字数が多い場合や少ない場合は、別なことばや熟語・地名などで合わせるようにしましょう。その場合で大切なことは、文字数を合わせることに集中するあまり、折角の曲のイメージを損なうような歌詞の流れになることがありますので、充分注意しましょう。
また文字数を考えながら、このことばは1番より3番の方が合っているのではないか?などど、あなたは気付かれたかも知れません。そのような場合は、躊躇なく入れ替えてみましょう。
それは、あなたが作詞に慣れてきた証であり、この先の上達が見込まれます。
残念ですが、折角よいことばが浮かんでも、文字数が合わなければ使えません。しかし、どうしてもそのことばを使いたいときは、大きな変更を覚悟で使ってみることも悪いことではなく、逆に歌詞のクオリティを高めることになる場合もあります。
私の「ひとり雨晴海岸」の作詞のプロセスからひとつ引用してみます。
(変更前) ひとり来ました(7) 夢で何度も見た浜辺(12) 合計19文字
(変更後) ひとり来ました(7) 氷見線に乗り ( 7) 合計14文字
文字数が大きく減りました。このため他の2番・3番の1行目の文字数も大きく変えなければなりません。大きな決断です。でも、変更後の文章は、主人公の孤独な姿が感じ取れる、より具体的な歌詞になったと思います。この辺が、作詞の難しいところであり、また面白いところと言えるかも知れません。
香月流の作詞は、ことば集めからの文字や文章を何度も変更・修正の繰り返しを行い、苦労の末に完成させるというやり方です。諦めずに根気よく頑張れば、あなたはきっと満足できる歌詞を完成させることが出来るはずです。