創作の小部屋「独居老人のひとり言」第9回
2019年03月31日
「独居老人のひとり言」第9回
「独居老人のひとり言」ですが、書き始めは順調でしたが途中からぶれ出しました。芯が通っていなくて、ふらふらしています。何とか軌道修正をしながら、結論に向かって突き進んで行けたらと思っています。
「独居老人のひとり言」第9回
第8章 無職となって
ここしばらく、毎週水曜日のパソコン教室も参加していなかった。もちろん初めから関わった講師役の二人には事情を話し、また落ち着いてから参加するということで快諾を得ていた。
最近の私は落ち込んでいる。行こうとすれば、水曜日の勉強会も参加できる状態にあった。時間を持て余してさえいるのだから。一人で家の中にずっといることは辛かった。というより世の中から、自分の存在の必要性を否定されたような、暗澹たる思いで打ちのめされていた。こうした気持ちのまま、どうしてパソコン勉強会の仲間に会えるだろうか?
そういえば、妻に何となく雰囲気の良く似たあの50代後半の女性は、まだ参加しているのだろうか?最近は勉強会で会うこともないので、仏壇の妻にはなにも恥ずかしがることはなく、最近の派遣労働についての愚痴を聴いて貰っている。
妻が私に仏壇の向こう側から、言いたいことは分かっている。これ位のことで弱音を吐くのは男らしくない。もっと悲惨な状況の中でさえ逞しく生きている人々はごまんといるのだから、もう少し強い気持ちを持って生きて欲しい。
「労働者派遣法」なる法律が、今の日本を、今の老若男女の労働者を貧しくしているという話しを、幾つか行った派遣先の若者や中高年者が良く話していた。中卒という学歴を隠れ蓑にして逃げるわけではないけれど、今まで派遣労働という言葉は知ってはいたが、この法律の内容については全く知識がない。
私は派遣労働者なる人々とは、殆ど交差点ですれ違った程度の会話しかしていないが、生活状況は派遣社員の専用駐車場をみればある程度分かる。まず、殆どが660㏄の軽自動車ばかりだ。それも年式が古い車ばかり。
休憩時に話す内容は、生活に余裕のある者には多分理解できないだろう。ある50代の派遣社員は、鍋にインスタントラーメンを2つと卵を入れて、鍋から直接食べる時が至福の時間だという。
何年頑張って熟練者になろうとも、私のように昨日今日入った者でも同じ時給というのでは、確かにモチベーションも上がらないだろう。世代や男女関係なく、月22日働いたとしても、税引き後の手取りは13~15万円。ボーナスは無く、祝日が増えるのを決して歓迎することは無い。収入が減るだけだ。
若い人は、家賃やスマホの支払いや若干の娯楽費を引くと、食べて行くだけで精一杯だ。結婚や持ち家など、夢の夢。高級車に乗りたい者は、10数年も前の中古車を買い、自動車税やガソリン代に悲鳴を上げて1年も持たずに手放すことになる。
私は、何を言いたいのだろうか?ここまで書いてきて、派遣労働者の人たちが生活に追われ辛い状況であることは、メディアを通じて、あるいは身近な人を通して、私でなくとも大勢の人たちは知っている。今更、書く必要があるのか。
私も同じようなものだ。私はお酒が大好きだ。アルコール依存症かと自分でも思う位だが、年1回の市の検診でのγ-GTPの数値は正常値である。数日禁酒をしてから健康診断に臨む友人がいるが、私は前の晩も普通に晩酌をする。
スーパーにお酒を買い物に行くと、まず冷蔵庫の中の包装紙で包まれた日本酒の棚の前は通り過ぎる。その先の、紙パックのコーナーから物色する。酒の知識がある訳ではないが、1,8リットル入りで1,000円未満の安い酒は、それなりの製造方法があるらしい。以前何かで読んだ覚えがあるが、詳しいことは忘れた。でも、私はやはり1,000円未満の酒を選んだ。
良く刺身売り場を覗いたりするが、たまにマグロのぶつ切りを買う。いくつかの種類が混じった盛り合わせなど、金額を見てためらってしまう。
衣類にしてもそうだ。気に入ったシャツやセーターを手にとっても、値段を見て諦めることが多い。安いものは長持ちしないのは知っている。一度洗濯をすると伸びてしまったり、逆に縮んでしまったりする。それでも、やはり買ってしまう。
近くには100円ショップがある。これは助かる。ついつい要らないものまで買ってしまうのは、フラストレーションからか? つづく