創作の小部屋「独居老人のひとり言」第17回
2019年04月20日
「独居老人のひとり言」第17回
今日は土曜日で、仕事も休みです。朝、6時頃からパソコンに向かって、「独居老人のひとり言」を書いています。予めストーリーは考えておりませんので、ちょっとしたキッカケからストーリーは、どんどん変化し歩いて行きます。その行く先は私にも分かりません。
「独居老人のひとり言」第17回
第16章 料理勉強会のキッカケ
次の週のパソコン勉強会の休憩時に、大川さんが皆の前で私に聞いた。
「小松さん、先日の『じゃがいもとキャベツの甘煮』、どうでした?うまく作れました?」
私は少し驚きながら答えた。
「ええ、レシピの通り作りましたので、とても美味しく作れましたよ。」
皆がどういうことなのか、興味津々という顔で、大川さんと私の両方の顔を見比べた。私は正直にありのままを仲間に話した。すると、ある高齢者の女性Sさんがいきなり真剣に話し始めた。
「私、先日テレビで見たんですけど、高齢者には低栄養者が多いそうなんです。でも、家族と一緒に食事をしている人は少ないそうですけど、一人で住んでいる人が低栄養者になる人が多いんですって。低栄養者の人は、そうでない人と比べると介護を受ける確率が同じ年齢の人よりずっと高くなるんだって。
それに免疫力が低下し、風邪を引きやすくなったり肺炎にもなりやすいと講師の先生が言ってました。他にも一杯あって、認知機能が低下するとか心筋梗塞や狭心症にも掛かりやすいとか。
私も、一人暮らしで食生活は随分いい加減なので、心配になってしまって。小松さん、私にも『高齢者のための季節の献立集』のコピーを頂けませんか?コピー代はお支払いしますから。」
いつも賑やかな休憩時間が、急に暗く寂しいものになってしまった。
そのパソコン教室の日の夕食も、私は献立表のとおりに作ろうとした。『高齢者のための季節の献立集』では、ごはん・カレイの煮つけ・ブロッコリーの菜種和えだった。(私にも少し知恵がついた。秘密だけれど、このレシピはなかったので、ネットで調べた。)
スーパーで材料を買って来た。カレイの煮つけは、鍋にコップ半分の水を入れ、しょうゆ・砂糖・みりん・酒等を適量入れ沸騰してから、頭を落とし3つに切り分けたカレイを入れた。
ブロッコリーの菜種和えは、鍋でブロッコリーを茹で、茹であがったら取り出し冷ましてから、冷蔵庫で冷やす。それから油を引いたフライパンに卵を入れ、混ぜながら火を通してから冷ます。最後に、醤油と和風だしで調味料を作り、一口サイズに切ったブロッコリーと卵と調味料を絡めて完成。
このブロッコリーは、マグネシウムとカルシウムを多く含んでおり、血圧を正常化する効果があるらしい。また美容にも効果的なビタミンCがレモンの約2倍含まれているとのことなので、女性にもお勧めだ。この献立表は素晴らしい。改めて感動してしまった。
次の週のパソコン勉強会の休憩時間に、私が『高齢者のための季節の献立集』をほめると、63歳になる一人暮らしのYさんが言った。
「小松さん、私はスーパーで好きなものばかり食べているので、この前のSさんの話しを聞いてから、何か心配になってしまった。だが私は料理には全く自信がない。そこでお願いなんだけど、このパソコン勉強会のように『高齢者のための季節の献立集勉強会』を、このメンバーで開いて貰いたいと考えたのだが、どうでしょう?」
この公民館には、調理用器具が設置された部屋があった。それに使用料はとても安い。大勢が入れる大きさである。瞬時に大川さんが声を上げた。
「その考えは、私も素晴らしいと思います。確かに男の方で料理が苦手な方は多いと思います。この献立集を教科書にして、毎週1回程度この公民館で勉強会を行えば、1年後ぐらいには皆さん、かなり上達すると思います。どうでしょう。皆さん、この際思い切って始めてみませんか?」
大川さんが話し終えると、全員賛成というように拍手が響いた。そこで私も発言した。
「料理勉強会と言いますと、いろいろ準備など大変な問題もあろうかと思いますが、心配するより先ず行動が大切です。皆さん、賛成のようですので、次回のパソコン教室の後、運営についての話し合いをしたいと思いますがいかがでしょうか?こんな勉強会にしたいとか希望があれば考えて来て下さい」
ここで休憩時間は終了した。 つづく