課題テーマに挑戦「鳥海山」第10回
2017年09月22日
課題テーマに挑戦「鳥海山」第10回
今回で、課題テーマに挑戦「鳥海山」は10回となります。今回は、「鳥海山物語」を完成させた後に、作詞に入るという方法を選択しました。
パソコンに向かっての行き当たりばったりの方法が功を奏する自信はありません。イメージで作詞をすることも楽しい方法ではありますが、ドラマを作って主題歌の作詞をすることもまた楽しいことだと思っています。
本日は、第2章(2回目)をお送りいたします。ぜひ、ご覧頂きたくお願い致します。
鳥海山物語
第2章(2回目) 昭和46年1月
成人式には、由美子は出席しませんでした。ずっと以前母が縫ってくれた着物には愛着はありましたが、成人式の晴れの舞台には相応しい着物ではなかったのです。
由美子は、御嶽神社を今日ほど遠くに感じたことはありませんでした。由美子は足早に歩きました。いつもは平気なのに、息切れがし、そして喉が渇きました。やっと鳥居に着くと、既に総一郎は着いていて、顔を真っ赤にして喜びました。
「走ってきたの?息が辛そうだね。これを飲んでごらん。」
総一郎は小さなカバンの中から缶ジュースを取り出し、由美子に差し出しました。みかんジュースでした。少し缶の匂いがしたけれど、乾いた喉にはとても甘くて美味しい飲み物でした。
「おいしい!甘くて美味しいね~!」
由美子は、総一郎に開けてもらった缶ジュースに喉を鳴らしました。傍で総一郎がさも嬉しそうに、笑顔でその様子を見つめています。
「由美ちゃん、なんで成人式来なかったの?」
総一郎に聞かれて由美子は困ったが、本当のことが言えず母の用事があったからと言い訳をしました。
「由美ちゃん、僕、大学を卒業したら東京の会社に入って働くつもりなんだ。大きな会社なんだよ。先輩が大勢いて、僕にも卒業したら来いよって、言ってくれてるんだ。僕、長男だけど親父もお袋も、一度の人生だからお前の好きなようにしたらって。」
由美子は眩暈がしました。
確かに総一郎は長男だけど、弟が二人もいるのです。弟たちは地元に残るらしい話に、由美子はいっぺんに悲しくなってしまいました。由美子には、3歳で父に死なれてから夢中で働き、自分を育ててくれた母がいるのです。
母を、一人にはできない・・・!
総一郎と、将来を約束した訳ではないけれど、由美子の小さな胸が震えるほどの衝撃の中で、由美子はその瞬間母を想いました。 つづく