課題テーマに挑戦「鳥海山」第18回
2017年10月29日
課題テーマに挑戦「鳥海山」第18回
今日のつくばは朝から雨です。というより、昨日から続いてます。昨日は、大洗の涸沼にハゼ釣りに行きました。車中泊をしてもいいようにキャンプ用具も持参しました。家の者に、台風が来るのに大丈夫なのと言われましたが、雨が降ったり風が出て来た場合は、退散するつもりでした。
朝用事があったので、出発は10時を過ぎました。途中食事をし釣り場に着くと急いで釣り糸を垂れましたが、雲行きがおかしくなりポツリポツリとやはり雨が降って来ました。雨具の用意は特にしませんでした。合羽を着ても、釣りはどうしても濡れてしまいます。この時期は風邪をひきやすいので、早々に退散することにしました。買った「青イソメ」がもったいないと思いましたが、風邪を引くよりはましと決断しました。
そう決めてリールを巻くと、体長10cmくらいのハゼとは違う綺麗な魚が掛かっていました。少し風もあったので全くアタリは感じませんでした。その魚は、水に放しました。
そういう訳で今日は時間が取れましたので、朝5時頃起きて「鳥海山物語」を書き始めました。今回は「第4章1回目」と致しました。この4章が果たしてどの位の長さになるか予想がつきません。それではさっそくご覧頂きます。
鳥海山物語
第4章(1回目) 昭和50年8月
同僚の美代子の話しは確かに衝撃でした。しかし、由美子には総一郎に対する確かな愛がありました。「何があっても信じ合おう」という総一郎への、絶大な信頼がありました。
「総一郎さまへ お元気ですか?お仕事がんばっていらっしゃる様子が浮かびます。私も縫製工場で、専務さんや同僚の美代子さんたちと仲良くしてもらいながら、楽しく毎日を過ごしています。
総一郎さんが何でも話し合おうねと言ってくれ、またお互いに信じ合おうねと言ってくれた時、私はもう数えきれないくらい御嶽神社で泣いたのに、あの時も泣いてしまいました。こんな泣き虫の私をいつも励まし、一緒になろうねとまで言ってくれた総一郎さん。
今の私は、総一郎さんがすべてです。総一郎さんと心が離れたら生きて行けないと思っています。
総一郎さんが何でも話し合おうねと言ってくれたので、勇気を出して話します。
美代子さんが、総一郎さんが仁賀保の大きな会社の社長さんの家に婿養子に入るという噂を聞いたと言うのです。
もちろん私は、そんなことがある筈がないと信じています。誰かの、詰まらない冗談に決まっています。私は、総一郎さんを信じていますので、こんな噂話は平気です。
心配させるようなことを書いてごめんなさい。今度はいつ会えるのか、それだけを楽しみに毎日を生きています。お休みの時、なるべく早く帰ってきてくださいね。
それから最後に、どうかお仕事あまり無理しませんように。総一郎さんの健康のことが一番心配です。食事は、総一郎さんが自炊をされているとのことですが、私も一度くらい、総一郎さんのために料理を作ってあげたくて仕方ありません。将来、一緒になった時のことを考え、お料理の本を買いました。きっと、総一郎さんに喜んでもらえるよう頑張ります。
今度から、お手紙はお友達を介さないで、私あてお送り頂いて大丈夫です。母も、理解してくれておりますので。かしこ 由美子 」
由美子は、以上のような手紙を総一郎に書きました。
投函後数日してからの由美子は、すぐに総一郎から返信の便りが届くことを信じて、仕事を終えると駆けるようにして家路を急ぎ、木製の郵便受けを覗き込む毎日でした。郵便受けに何も入っていないことを知ると、大きなため息をつきながら、仕事が忙しいのだろうと自分を慰める由美子でした。
由美子は、総一郎からの返事がないまま、週に一度は必ず総一郎の健康を気遣う手紙を出し続けるのでした。 つづく