課題テーマに挑戦「鳥海山」第19回
2017年11月04日
課題テーマに挑戦「鳥海山」第19回
昨日から3連休です。滞っていた「鳥海山物語」を今朝から書き始めました。この時代背景は、昭和です。昭和の20年から30年頃はまだ随分と貧しく、私など、いやみんな継ぎ接ぎだらけの洋服を身にまとっていました。甘いものにも飢えておりました。
ですが、貧しいから不幸という訳ではなかったと思います。おやつと言っても、サツマイモや釜の飯で作った握り飯くらいでした。でも、不幸と思ったことはありません。たまに、結婚式やお葬式の引き出物のおまんじゅうや練り菓子にあり付いたときは、とても幸福感で一杯になりました。
私などは昔貧しかった反動で、自分の子供におもちゃやお菓子などを与え過ぎ、いつも妻に叱られていました。
また、脇道に逸れました。物語に入ります。
鳥海山物語
第4章(2回目) 昭和49年8月
話しは少し戻ります。総一郎が両親に土下座をしながら、由美子とこの秋に一緒になりたいと懇願しましたが、受け入れては貰えませんでした。
今年の春から東京の芝浦にある北星産業で総一郎は働いています。一流の企業だけあって給料も良くまた福利厚生もしっかりしていました。この会社でなら、由美子と二人で世間並み以上の生活ができるのにと総一郎は思っていますが、あれだけ強い反対をされただけに、焦らずに由美子との愛を育み時間をかけて説得していく以外に方法はないと考えました。
学生の時は夏休みがあり、必ずお盆には帰省しておりましたが、社会人となると自由になる時間は限られて来ました。総一郎の会社での部署は企画部と言うところでしたので各地に出張する機会も多く、また事前に休暇を申請することもなかなか困難でした。
総一郎は、由美子に手紙を出しました。
「拝啓 お元気ですか?僕も元気で仕事に明け暮れています。食事や身の回りのことは、大学の寮での暮らしが長かったので全く平気です。でも、由美ちゃんがいてくれたら、どれほど幸せだろうと時々考えてしまいます。
僕の両親は、由美ちゃんとの結婚に反対ですが、時間をかけて説得していくつもりです。ですので、由美ちゃんは何の心配もいりません。僕に任せて下さい。
お盆には帰るつもりでしたが、入社1年目ですので先輩に遠慮して、今年は帰ることを諦めました。でも、正月には必ず帰りますので、それまで待っていてください。
僕たちには、一緒になるために二人で乗り越えなければならない大きな壁があります。でも、この壁を二人の愛と信頼で乗り越えることが出来た時は、それは2倍にも3倍にも喜びが膨らんで、僕たちは日本一の幸せ者になることが出来ます。
ですので、由美ちゃん!二人で必ず乗り切って、大きな幸せを掴みましょうね!
正月までまだ長いですが、風邪など引かぬよう身体を大切にして下さい。それから、お母さんを大切にして下さい。由美ちゃんには、改めて言うことではありませんが。じゃあ、正月を楽しみに仕事を頑張っていきます。さようなら。」
総一郎は、この手紙を少しでも早く着くようにと、昼休みに郵便局まで行って投函しました。
手紙を受け取った由美子は、総一郎の熱いこころに涙が溢れて止まりませんでした。 つづく